誰にも真似のできない圧倒的なパワーと豊かな音楽的アイディアに驚き、酔いつつ、その中に込められた揺るぎなき生き様と誇りが深く胸を打つ。約3年半ぶりにメジャーレーベルからリリースされる山嵐のニューアルバム『PRIDE』を聴いて、とことん楽しみつつも身体が震えるような感動を覚えたのは、この音楽が彼らの生き方そのものだと感じたからだ。年輪を重ねた者だけが持つ重い説得力と、年輪を重ねたからこそ得た軽やかな自由が、最高のバランスで共存している。『PRIDE』は間違いなく、山嵐のキャリアの最高峰に位置する傑作だ。
振り返ると、決して簡単な道のりではなかったのだろう。96年の結成以降、折からのミクスチャーロックやパンク・ムーヴメントにも乗って20代早々にして大きな成功を収めた山嵐。その後は徐々に音楽性の幅を広げ、『COLORS WATER MUSIC』(2003年)では13組のアーティストとコラボレーションを果たし、亀田誠治をプロデューサーに迎えた『湘南未来絵図』(2006年)を作るなど、次々に新たな可能性にトライしてきた。2007年からは、今や湘南地区最大の夏フェスに成長した「湘南音祭」の第一回を開催し、そのオーガナイザーとして高い評価も受けた。が、その一方で所属事務所とレコード会社の契約切れに伴い、ここ3年ほどは自らのレーベル「豪直球」を中心とした完全インディーズの活動も味わった。しかしその間に作った『狼煙-NOROSHI-』は、メンバー自ら「ファーストと同じ心理状態」と語るバンドの原点回帰作で、その次に位置するのがこの『PRIDE』だ。つまり、インディーズから勢いよく上がってきたバンドのメジャー第一弾というふうに、このアルバムをとらえてもらっても良いと思う。
実際、このアルバムには目を瞠るようなオリジナリティ溢れる音楽がたっぷり詰め込まれていて、何度繰り返しても飽きることがない。「Survivor」の、獣の足音のようにしなやかに弾むグルーヴと、警告音のように鳴り響く鋭い2本のギターとの絡み合いに。「PRIDE」の、6人が一丸となって突き進む熱いハードロックのアンサンブルに。「Ride with us」の、疾走感溢れるハードなラップから明るいサビのメロディへと一気に視界が開ける瞬間に。「CROWS」の、ゴリゴリに歪んだ典型的なヘヴィロックのド迫力に。「Get Back」の、シンプルなブレイクビートとラップに開放感たっぷりのサビのメロディを組み合わせた鮮烈さに。「山Yeah!」の、ビートルズなどを髣髴させるブルージーなオールドロック感に。「Supermen」の、強烈な四つ打ちと笑っちゃうほどファニーなラップの意外なカッコよさに。「people fly」の、エレクトロ・ダンスとヘヴィロックを完璧に共存させた鮮やかな手さばきに。「JUSTICE」の、ひたすらゴリゴリの重低音を貫くスローでブルージーな男くささに。「キリヒライター」の、多方面で活躍するジャズ・ドラマーの江藤良人をフィーチャリングしたスリルたっぷりのインタープレイの応酬に。そして「anytime,anywhere」の、叙情味あふれる演奏とあまりにも美しいメロディとあたたかい愛のメッセージに。――感動の瞬間は、何度聴いても途切れることがない。
現在の日本の状況と、自らの境遇をしっかりと見据えたリアルな歌詞の世界も、深く熱い感動を呼び起こす。特に「Survivor」「PRIDE」「CROWS」と並ぶ頭の3曲が鮮烈で、「ここは戦場」と歌いだされる「Survivor」の一行目から、この国の不況や貧困、人間関係のもろさなどの現状を直視したストレートな表現に遠慮はない。しかし単に嘆き怒り皮肉を言うのではなく、「何度でも繰り返すFight for Real」という決意が、長くタフなキャリアを積み重ねてきた山嵐の基本姿勢だ。その決意は「Ride with us」「Get Back」でより鮮明になり、特に「Get Back」の、過去に成功と失敗を両方体験したものにしかわからない赤裸々な心理描写の果ての「行こう、進もう、導かれてくそのままに」という言葉には、とてつもない重みがある。成功したバンドだから言える誇りも、まだ止まらない気持ちが故の葛藤も、隠すことなく歌いこまれている。そして曲は進み、アルバム中唯一のラヴソングと思われるラスト曲「anytime,anywhere」にたどりついた時の感動をなんと表現すればいいか、僕の乏しいボキャブラリーではとても追いつかない。「ずっとこころにLove」という美しいリフレインが、いつまでも心に残って離れないのを慈しむ以外にない。
10代で結成され、20代も早々に成功を収めたバンドが様々な経験を経て30代になり、しっかりと地に足をつけて、いちロックバンドとして再び力強く歩みだす。今回のメジャーレーベルの第一線での活動は、山嵐にとって新たな夢への第一歩だ。一人でも多くの人に、この生命力溢れる音楽の魅力を身体いっぱいで感じ取ってほしいと心から願う。
(音楽ライター・宮本英夫)
